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一見縁がなさそうに見える「薬剤師とスポーツ」の融合によって生まれたアンチ・ドーピングプロジェクト。
アンチドーピングの啓発活動および研究拠点の確立に向けてどのような取り組みを実施しているのでしょうか。
今回は本プロジェクトを推進する日本大学薬学部の榛葉繁紀教授にお話を伺いました。
榛葉繁紀(しんばしげき)さん
▼ご経歴
1991年 静岡県立大学大学院 薬学研究科修了
1991年-1995年 米国ベイラー医科大学でリサーチアソシエイトとして勤務
1995年12月から日本大学薬学部に勤務、現在に至る
FNS27時間テレビ(フジテレビ)、林修先生の見れば納得等(NHK)、世界一受けたい授業(日本テレビ)他 多数のメディアに出演
日本薬学会代議員、日本肥満学会評議員及び日本時間生物学会評議員
▼お仕事内容
体内時計による生理機能の調節等、および遺伝子ドーピング技術の開発に携わる。
■榛葉教授の詳細プロフィールはこちら
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1.アンチドーピング教育の推進を目指して
ーまず「アンチ・ドーピングプロジェクト」を設立した背景と、込められた想いをお聞かせください
もともと本プロジェクトは、日本大学の特徴づけをしたいという想いから始まった取り組みです。
ご存知の通り日本大学はスポーツにおいて認知度が高く、メダリストも多数輩出しています。また2021年の東京オリンピックを控え、今後日本国内のスポーツ熱が高まることは明白です。
こういった状況下で、私たち薬学部がスポーツ業界の振興にどう貢献できるか考えた結果生まれたのが「アンチ・ドーピングプロジェクト」という取組みです。
そもそもドーピングというのは、簡単にいえば薬の不適切な使用を指します。
薬の使用に関しては薬剤師がもっとも適切な知識を持つ存在ですから、薬学部が中心となってドーピングを防ぐ啓発活動をしたいと思いプロジェクトを開始しました。
日本大学の選手を守ることはもちろん、将来スポーツに関わる子どもたちが安全にスポーツに打ち込めるよう、アンチドーピング教育を進めたいと考えています。
2.啓発活動の伝道師として、薬剤師に活躍の場を
ー具体的にはどのような活動を行なっているのでしょうか
活動内容は大きく2つあります。
まず1つ目は啓発活動です。
日本で起きるドーピングの多くはサプリメントを摂った際に知らずに基準に引っ掛かるパターンなんです。オリンピックに出場するような一握りの選手以外、薬や栄養の教育をしっかり受けてきた人は案外少ないんですよ。
そこで、日本大学にいる選手に対して実際にヒアリングをし、ドーピングについて何を知りたいか、あるいは過去どのようなミスを犯してしまったかなど、リアルな声を聞き出し啓発ツールの作成を進めています。
啓発ツールにはドラマ形式の動画(DVD)、マンガ、かるたがあり、あらゆる年代の方に親しみやすいように工夫を凝らしています。
ドーピングについて知識を得られる機会を少しずつ増やし、地道に・継続的に啓発を続けることが重要だと考えています。
そして2つ目は、科学的な分析・研究の推進です。
どのような場合にドーピングに引っかかるのかといった調査のほか、遺伝子ドーピングについても研究開発を進めています。
遺伝子ドーピングとは、簡単に言えば外部から薬を取り込むのではなく身体を組成する成分をもとに身体を強化するドーピングです。
選手自身の体内にある成分でつくられるので、従来のドーピング検査では検出がなかなか難しいんです。
日々研究を重ねることで、少しでもドーピング問題の解決に近づければと考えています。
ープロジェクトにおいて薬剤師はどういった役割を担っていますか
最終的に、薬剤師は啓発活動の伝道師になる存在だと考えています。
啓発活動のアプローチには2つあると考えていて、1つは選手の集まりや学校に行くなど私たちから出向いて選手や子どもに教育をするパターン。
もう1つは、選手が相談に来やすい薬局の環境を整備するといったパターンです。たとえばスポーツファーマシストがいる薬局に目印を付けたりスポーツファーマシストの研鑽をサポートしたり、といったことが挙げられます。
珍しい例ではありますが、在学中にオリンピックに出場し、現在は薬剤師としての知識を活かして選手をサポートしている方もいます。 あるいはスポーツの審判を務めていた方が薬剤師という資格を活かしてスケート選手にドーピング教育をするといった例もありますね。
私たちが思っている以上に、選手たちは情報の在りかを知らないですし、実際ドーピングへの対処に関する情報は入手しにくいんです。 「どうすれば防げるのか」「誰に相談すればいいのか」そんな悩みを持つ方々に、情報を分かりやすく届けることが私たちの使命だと考えています。
ースポーツと薬剤師というのは一見遠そうに思えますが、どのような関係だとお考えでしょうか
今まで両者の関係性はそんなに注目されていなかったと思います。実際スポーツファーマシストもマイナーな資格でした。
ですが、ここ最近は講習を受けたくても倍率が高く受けられないことがあるほど人気が高まってきています。
薬剤師にとって「スポーツに積極的に介入していこう」という想いが強まりつつある表れではないでしょうか。
スポーツというのはアスリートレベルのものだけを指しているのではなく、一般の方が健康維持のために行なう運動や、その際に活用する運動強度をアップさせるサプリメントの選び方も内包していると思います。 その際に、たとえばサプリメントの選び方などの情報提供も役割になっていくのではないでしょうか。
また今後スポーツそのものが一般生活のなかにより深く入り込むなかで、薬剤師がそれをサポートしていく存在になると考えています。 実はスポーツファーマシストには、資格を持っていても活かす場がないという課題があるんですよ。啓発活動を行なうことで、専門性の発揮どころを求めている先生方に活躍の場を提供するというのも私たちの使命のひとつですね。
3.スポーツを起点に実生活に寄り添う薬剤師を輩出したい
ープロジェクトの今後の展望を教えてください
今はコロナ禍で人も集まりにくく啓発活動も難しい状況ですが、オンラインをメインにしつつSNSも積極的に活用していきたいです。
オリンピックに向けてスポーツ熱は変わらず高まっていくと思いますので、とにかく情報に触れてもらう機会を提供し続けるのが大事だと考えています。
また、先ほどお話した通り薬剤師の先生方も活躍の場を求めていますので、そういった方々に向けた機会提供を通じ、裾野をどんどん広げていきたいなと思います。
ー最後に、日本大学薬学部が描く理想の薬剤師像についてお聞かせください
薬学部はコアカリキュラムが定まっているため、各校の特徴を身に着けた薬剤師を育てるのが難しい現状ではありますが、日本大学らしい薬剤師を育成していきたいですね。
日本大学の卒業生には実生活に密着したかたちでの活躍が求められていると思うので、本当に困った患者さんに、スポーツなども絡めた有益な情報を提供できる存在であってほしいです。
また複数の学部を持つ大学という特徴を活かし、AIなど薬学以外の感覚をもった薬剤師を育成できればいいなと考えています。
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