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「調剤ミスをしたらどうなるの?」
「調剤ミスを減らしたい…」
調剤ミスというのは薬剤師という職業柄身近にあるもの。人間なので必ずしもミスを犯さないということはありません。しかし大事なのはミスを犯した時にいかに適切な対処を行うのか。またそこから再発防止に努められるのかが重要です。
この記事では、調剤ミスをしたらどうなるのか、調剤ミスをしないために心がけるべきことなどを紹介します。
また番外編として調剤業務がない薬剤師の仕事を見つける方法もご紹介します。
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この記事の目次
1.調剤ミスとは?
日本薬剤師会では、調剤ミスを次のように定義しています。
- 調剤事故…医療事故の一類型。調剤に関するすべての事故関連して、患者に健康被害が発生したもの。薬剤師の過失の有無を問わない。
- 調剤過誤…調剤事故の中で、薬剤師の過失により起こったもの。調剤の間違いだけでなく、薬剤師の説明不足や指導内容の間違い等により健康被害が発生した場合も、「薬剤師に過失がある」と考えられ、「調剤過誤」となる。
- ヒヤリ・ハット事例(インシデント事例)…患者さんに健康被害が発生することはなかったが、“ヒヤリ”としたり、“ハッ”とした出来事。患者への薬をお渡しする前か後か、患者さんが薬を服用した後かどうかは問わない。
「調剤ミスをしてしまうのが怖い…」
「薬剤師なら調剤ミスは避けられないの?」
不安を抱えながらの仕事は、思っている以上に見えないストレスがかかるものです。大切なのは「調剤ミスはいつでも誰でも起こす可能性がある」と認識して、ヒヤリハット事例の時点で気づくこと。
調剤ミスは、患者に健康被害を与えかねない重大な事故です。二重三重の防止策を考え、実行していきましょう。
2.調剤ミスをしたらどうなるの?
調剤ミスを起こして患者に健康被害があると、法的責任を問われることは薬剤師ならご存知でしょう。
しかし具体的にどういった法的責任を負うのかを知らないと、仕事するうえでも不安や対応の不適切さにつながります。そこで薬剤師が負う3つの法的責任、「刑事責任」「行政責任」「民事責任」について解説します。
それぞれの法的責任をしっかり認識すれば、調剤ミス防止への意識や万が一、過誤が起こってしまった時もスピーディーに対応できるでしょう。
刑事責任
まず刑事責任について確認していきましょう。
刑事責任とは犯罪を犯した人が刑罰を受けるものですが、具体的に調剤過誤をした薬剤師は、刑法211条1項の「業務上過失致死傷罪」に問われます。
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
とても重い罪のように感じますね。しかしながら実際には、調剤過誤のすべてにおいて刑事責任を負うわけではありません。
たとえ調剤過誤があったとしても、患者の健康被害が軽い場合は刑事責任を問われる可能性は低くなります。健康被害がなければ、罪として成立することもありません。もちろん調剤過誤は防ぐべきですが、不安になりすぎる必要はないでしょう。
近年で実際に起こった刑事責任を負った事例は、いずれも患者が死亡したケースでした。具体的には自動錠剤分包機の設定ミスにより、ウブレチドを調剤した事件です。この事件でもっとも不適切だったのは、管理薬剤師が後日、調剤ミスに気づきながらも患者に服用中止や医師への情報提供をしなかったこと。
結果、患者は死亡し、調剤および監査した薬剤師らが禁固1年、執行猶予3年の刑を受けました。責任を恐れて調剤ミスに対して適切な対応ができず、患者が命を落としてしまう事態こそ避けねばなりません。
行政責任
薬剤師の行政責任とは、薬剤師法によって定められた処分です。調剤ミスによって罰金刑以上の罪に問われた場合、薬剤師としての免許取り消しや業務停止などの処分を受ける場合があります。
とはいえこちらもすべてのケースで処分されるのではなく、厚生労働省によって事件と見なされたものが医道審議会にかけられます。医道審議会によってその処分が相当であると認められた場合、処分が課せられるという流れになります。
刑事責任の章でも例に取り上げたウブレチド事件では、管理薬剤師に業務停止1年という行政責任の処分が下されました。この他にも「薬剤師としての品位を損するような行為」が認められた際に、行政責任を問われるケースも。例えば薬事に関する犯罪行為や不正があった場合などです。
これらは薬剤師としての良心にも関わる責任です。うっかりミスでは済まされないところですね。しっかり責任を自覚して業務を行なえば、必要以上に不安がらなくてもよいでしょう。
民事責任
民事責任とは被害者となった患者に対して、損害を補償するために金銭を支払わねばならない責任です。損害賠償責任ともいいます。刑事責任、行政責任が国や行政に対するものであるのに対し、民事責任は患者との間で発生します。
民事責任は調剤過誤により患者に損害を与えた場合に発生しますが、すべてのケースで損害賠償責任が生じるわけではありません。患者の損害状況や因果関係などを精査する必要があります。裁判の有無も事案によるところが大きく、調剤ミスが即刻、民事責任につながる可能性は低いでしょう。
「損害は金銭の支払いで解決するしかない」という意識を持つことは必要です。とはいえ金銭さえ支払えば解決できるという、安易なものでもありません。健康被害がなかったとしても、万が一調剤ミスを起こしてしまったら、誠心誠意で対応しましょう。
3.調剤ミスをしたらやるべきこと
以上のような法的責任を場合によっては負うことにもなりかねないのです。患者さんに健康被害を与えてしまわぬように、十分に気をつけたいところです。
しかしそれでも人間なので、誰しもがミスを犯してしまうもの。そこでもし調剤ミスをしてしまった場合に何をするべきなのかを次に説明します。
初期対応その1
調剤ミスに気付いたら、まずは以下の項目を確認し記録を取りましょう。
- 患者を特定する
- 薬を使ってしまったのか、使う前なのかを確認
- 使ってしまった場合「何を」「いつ」「どのくらい」使ったか確認
- 体調や症状など何が起きたのか詳細を確認
そして速やかに患者に対して的確な行動指示を出しましょう。特に患者から「調子が悪い」「様子がおかしい」など、健康被害に関して緊急性があると判断した場合は、状況によって以下の具体的な指示を出してください。
- 救急車を呼ぶ
- すぐに医療機関を受診する
加えて診察にあたる医師や処方医にきちんと状況を報告します。緊急でなくても患者に正しい指示を出し、医療機関と医師への報告が重要です。患者の健康被害を最小限に留めることを第一に、行動しましょう。
初期対応その2
初期対応その1で確認した情報を含め、下記の表についての項目をできる限り収集して整理・記録します。
記録すべき項目
- 初期対応で得られている情報
- 追加すべき情報例
- 第一発見者(連絡者)、薬局内の連絡を受けた者及び時刻
- 患者の容体の変化(健康被害の有無)
- 調剤者(処方監査者)、調剤薬鑑査者、投薬者の特定
- 主治医、開設者、管理薬剤師、医薬品安全管理責任者への報告と、受けた指示の 内容及び時刻
- 主治医の指示に基づいた患者への連絡内容及び時刻
- 対象となる調剤済医薬品および薬袋の保全
さらに他の患者にも、同様の事象が起きている可能性がないか確認。もし可能性があるなら、該当患者へ速やかに連絡します。
患者に正しい情報と行動指示をし、事象拡大を食い止めることが重要です。
例えば散剤装置瓶への充填ミスなど、薬局の運営上のトラブルで事象が起こっている場合は、迅速に中止してさらなる事象拡大を防止しなければなりません。ここで大切なのはスピードです。被害の拡大を防ぐためにも、情報の収集、的確な指示、防止策を徹底しましょう。
患者・家族への対応
誰しも自分の非は認めたくないものです。しかし調剤ミスは患者の命にも関わることですから「ごまかさない・隠さない・非を相手に押しつけない」の3原則で、患者や家族にきちんと説明しましょう。
ごまかしや隠蔽、責任の押し付け合いは、最終的に法的責任を問われた際にもよい結果を招きません。何が起こったのか、事実を正確に報告・説明することが大切です。患者や家族は怒っていたり、傷ついていたりするかもしれません。心のケアにも配慮しながら、誠実に対応しましょう。
法的責任や賠償責任の有無、患者の被害の大小にかかわらず、誠意のある態度で冷静に話し合いができるよう心がけてください。そのためには、話し合いの場所や環境を整え、患者の話をよく聞きましょう。
この際の話し合いは、医療側からの一方的な「説得」や「理解させる」ためのものではありません。あくまでも患者や家族が自ら考え、適切な「判断」ができるための話し合いである点も覚えておきましょう。
事後対応
医療機関への報告
調剤ミスによって患者の健康被害が疑われたり、実際に健康被害が生じたりした場合は、以下の項目を医療機関へ報告します。
- 患者の容態と経過
- 患者家族との話し合いの状況
- 再発防止策について
特に健康被害がなくても、患者側への説明や話し合いはきちんすべきです。その話し合いの顛末や、以後の再発防止策の内容も医療機関へ報告しましょう。調剤ミスが起きた事実を真摯に受け止め、今後の患者や医療機関との信頼関係・連携体制を保っていくためにも、医療機関への報告は非常に重要です。
失った信頼を回復するのは大変ですが、ミスをした時こそ誠意を尽くした対応がその後の信頼回復と再発防止につながるはずです。
薬剤師会、行政機関等への報告
調剤過誤が起きたら、原則として所属の都道府県薬剤師会または地域薬剤師会に報告し、その後の対応などを相談しましょう。相談する際は薬剤師会の窓口を確認して、薬局の担当者といつでも連絡が取れるように体制を整えます。
薬剤師会は専門職能団体として、「調剤事故事例」を収集・分析しています。薬剤師会からの情報提供や支援を受ければ、以後の対応や再発防止策など広い視野で対策できるようになるでしょう。
また患者に健康被害が生じなくても、患者側との話し合いが長期化するケースがあります。このような場合でも薬剤師会に報告して情報を共有し、再発の防止に努めるとともに隠蔽の意思がないことも明確に示しておきましょう。
一方、患者の健康被害が重篤もしくは死亡、または複数の患者に及ぶと予測される場合には、都道府県薬剤師会に連絡・相談したうえで、必要に応じて所轄の行政機関(都道府県、市町村、保健所など)に報告します。
警察への対応
調剤事故に関連して患者が死亡または障害が発生した場合またはその疑いがある場合等において、たとえば所管の警察署等から問い合わせがあった場合には、透明性の高い対応を行うという観点からも、その問い合わせに誠実に対応することが望ましいです。
報道機関への対応
同じような調剤ミスによる事故を繰り返さないために、事態の経過や事故の原因、再発防止策についての公表を求められる場合があります。対応としてはできるだけ早く報道機関に対応する担当者を選定して、薬剤師会とも協議したうえで事実発表をします。
この際にもっとも優先されるべきなのは、患者のプライバシー保護です。公表にあたって患者側への事前確認は当然のことですが、どの程度の内容まで公表してもいいか患者側との話し合いも必要になります。
患者側から了解が得られない場合には、報道機関にその旨を伝えておきましょう。公表する際にも厳重に患者のプライバシー保護に努め、個人を特定されないよう十分に配慮しなければなりません。
引用元:調剤行為に起因する問題・事態が発生した際のマニュアル
4.調剤ミスを防ぐために行うべき4つのこと
日々の業務に慣れてきた頃に、よく調剤ミスが起こるといわれています。薬剤師は間違いが起こることを前提として、疑問があれば問いただす姿勢が必要です。
また複数の人間で調剤を行うと、よりミスに気づくことができるでしょう。
調剤ミスを起こさないために、日本薬剤師会では以下の4項目を提唱しています。
(1)最終的なチェックは、必ず患者とともに行うこと
服薬指導時には、患者との会話の中で処方に問題がないか判断することはもちろんですが、薬剤師と患者双方の目で調剤された医薬品を再度確認することが大切です。
(2)誤認しやすい名称を知っておくこと
名称の似ている医薬品や、複数規格のある医薬品は特に誤認しやすいものです。薬品棚に「他規格あり」などの警告ラベルを貼っておくと良いでしょう。
(3)重大な健康被害を招く医薬品は区別すること
調剤ミスにより重大な健康被害を与える可能性のある医薬品については、他の医薬品と明確に区別をして、特に認識を強めることが必要です。
(4)薬袋・薬剤情報提供用紙等についても確認を怠らないこと
最近、薬袋等への誤記入や入れ間違いが増えています。記載されている名称と実際の医薬品が間違いないか、必ず再確認するクセをつけましょう。
チェック体制は、何重にもなっているとその分ミスを減らすことができます。今一度職場のチェック体制を見直して、改善できる点がないか探してみましょう。
5.疑義照会に関する事例
調剤ミスがあっても患者さんに健康被害を与えてしまう前に気づくことが大事です。そのためには、ヒヤリハット事例を多く知る必要があります。
では実際にどのような事例が起こっているのかをいくつか紹介します。
成分・薬効が重複した事例
往診により処方された薬剤を90歳代の患者に届けるため、施設を訪問した。患者はリカルボン錠50mgを月に1回服用しているが、お薬カレンダーにデノタスチュアブル配合錠が入っていた。
家族に確認すると、整形外科を受診し、骨粗鬆症の治療のためプラリア皮下注60mgシリンジを投与されたことがわかった。
往診している主治医に相談したところ、以前から服用していたリカルボン錠50mgを中止することになった。
背景・要因
家族の判断により患者は整形外科を受診した。整形外科から処方された薬剤を家族が施設の職員に渡し、施設の職員がお薬カレンダーに薬剤をセットした。
改善策
施設から外出して病院を受診する時は、必ずお薬手帳を携帯して受診先の医師に見せるよう指導した。
名称類似に関する事例
処方箋にマイスタン錠5mgが記載されていた。
てんかんの既往歴のある患者であったため、処方箋通りにマイスタン錠5mgを調剤した。薬剤を交付する時、患者の話と処方内容が食い違うため疑義照会したところ、医師はマイスリー錠5mgを処方するつもりであったことがわかった。医師の処方間違いであった。
背景・要因
処方医による単純な入力間違いであったが、患者にてんかんの既往歴があったため、薬局での調剤時には間違いに気付かなかった。
改善策
過去にもマイスリー錠5mgとマイスタン錠5mgの取り違え事例が複数あったことを病院へ報告した。
さらに、マイスリー錠5mgを処方する時は、一般名処方するように依頼し、改善された。薬局でも再度、取り違えの事例について周知徹底した。
6.【番外編】調剤業務がない求人を探す薬剤師にオススメの仕事
調剤業務がない職場は、ズバリ「薬局(OTCのみ)」と「製薬会社(MR職・CRA)」です。
「患者さんと直接関わりたい!」「決められたことを確実にこなすような仕事をしたい」という薬剤師には、薬局(OTCのみ)がおすすめです。
お客さんの症状に合わせてアドバイスを行い、薬剤師自身が選んだ薬・商品をお客さんに勧め、提案できることも魅力の1つです。調剤で考えられる薬以外にも幅広い健康に関わる商品を扱うことができるので、薬剤師としてやりがいをもって仕事ができるでしょう。
また製薬会社での仕事は残業が少なくかつ給与も高く、さらに土日休みがあるという点では、働きやすいと言えるでしょう。調剤業務やOTCを同時に行っていたドラックストアとは違い、顧客に合わせた仕事ではなく自分のペースで仕事を進められる点もメリットです。
もし調剤業務がない仕事に就きたいと考えているなら、薬剤師転職サイトに登録し、活用することをおすすめします。調剤業務がない仕事はもともと供給超過で非公開求人になることもあります。薬剤師転職コンサルタントに相談したり、最新の求人情報で最良の仕事を見つけることをおすすめします。
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7.まとめ
ここまで薬剤師の調剤ミスについて紹介してきました。
調剤ミスをしないというのはもちろん重要ではありますが、人間なので、ミスをしてしまう可能性も十分に考えられます。
大事なのは、ミスをしないような意識や環境づくりを行うこと。そしてもしそのような状況下でも調剤ミスをしてしまっても、その後にどのような対処をしなければならないのかをしっかり把握しておくことです。
リスクヘッジを行い、対処法を理解していればどんな事態が起きても対応できるので、ぜひ知識を蓄えてください。
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