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今年も全国的に記録的な暑さが続いていますね。
さて、月ごとに気になるニュースをピックアップして薬剤師目線で意見を述べる恒例の企画ですが、今回は「花粉症薬の保険適用外し」など、世間で大きく話題となったニュースを取り上げて解説しています。
皆さん様々な意見を持たれると思いますが、今回も一つの見方として参考にしていただければと思います。
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10代で一般薬依存が増加~最多は鎮咳・去痰薬「ブロン」
ニュース概要
厚生労働省が薬物障害患者を対象に行った調査によると、2018年度の使われた乱用楽物の中で、10代では市販薬が4割と最も多くを占めていることがわかりました。
揮発性溶剤や危険ドラッグが占める割合は2年前と比較しても大きく減少していますが、その代わりに咳止め薬「ブロン錠」や総合感冒薬「パブロン」といった市販薬が本来の目的以外に使用され、依存が疑われる例が増えています。
薬読 2019/8/21
コメント
一時期問題になっていた危険ドラッグの使用が激減し、その代わりに咳止めなどの市販薬の乱用が増加しているそうです。
市販薬は医療用医薬品よりも弱い成分であることが多いため、少し多めに服用したくらいでは大きな影響はないと思われますが、今回調査されたような依存者では一度に何百錠と服用するようなケースもあり、例え市販薬であっても中毒症状が出る危険性はあると思います。
さて、このニュースに関しては、市販薬の咳止めを販売しているドラッグストアや薬局の対応が問題視されています。
薬物依存とその撲滅に関してはいたちごっこが続いていますが、その中でドラッグストアや調剤薬局の立場としてできることがあるのかを考えてみたいと思います。
そもそも、市販薬の中で乱用の恐れのある医薬品については、販売個数の制限や、多量購入の際の理由の確認、若者に対する氏名、年齢の確認を行うなどの販売ルールが設けられています。
しかし、実際には販売ルールを順守できていないところは48%と、半数近くに上るそうです。せっかくルールを設けていても、それが順守されていなければ、市販薬の乱用は防げません。
この問題は、勤務しているスタッフの意識の問題と、会社としての問題の2つがあると思います。
私は調剤薬局勤務で、咳止めなどの市販薬を販売している職場ではありませんが、実際に販売している職場で働いていると仮定して考えてみます。その職場で、もし10代で咳止めを大量に購入しようとする人がいたら、必ず「おかしい」と思うはずです。
その際に、疑問に思いながらも「見て見ぬふり」をするのは、健康に関わる医療人としてあってはならないことだと思います。市販薬とはいえ、乱用されるリスクについても常に意識した接客をしなければなりません。
また、こういったルールに関しては、個々人が意識をするだけでは足りません。会社として、職場全体としてしっかりとしたマニュアルを持つべきだと思います。
今までは会社として対応を徹底しているところは少なかったのではないでしょうか。今回問題視されることとなりましたので、今後は各社しっかりと対応を取っていくとは思います。
こういったニュースで「薬剤師が仕事をしていない」と捉えられるのは不本意ですので、現場での対応を徹底することで、市販薬の乱用を食い止める存在になってくれたらと思います。
花粉症薬、保険適用外に=医療費600億円削減-健保連提言
ニュース概要
健康保険組合連合会は、医療機関で処方される花粉症治療薬の中で、市販薬と同じ成分がある薬に対して医療保険の適用から外して全額自己負担にすべきとの提言を取りまとめました。
医療費の削減のために、これまでも医療用医薬品の中でシップや保湿剤を保険適用から外すことなどが求められていましたが、今回の花粉症治療薬の自己負担化によって、最大で年600億円程度の医療費削減効果が期待できるとされています。
時事ドットコムニュース 2019/8/23
コメント
市販薬で同成分のある花粉症薬などについて、医療保険の適用から外して全額自己負担にすべきという提言がなされて、大きな話題となりました。
医療用医薬品と同成分がドラッグストアで買えるのはアレグラ、クラリチン、アレジオンなどの抗ヒスタミン薬と呼ばれるアレルギー薬です。薬代としては薬局でもらった方が安くても、病院の診察や薬局での調剤料などを合わせると負担としてはドラッグストアで購入する際と大差がないとの試算もされています。
保険から外すことで最大600億円の薬剤費が削減されるとしていますが、実際はどうなのでしょうか。
まず間違いなく言えるのは、これまで病院でアレグラなどを処方してもらっていた患者さんの、全員が市販薬を購入するようにはならないということです。
患者としては、「市販薬では効かないから病院を受診する」という人も多くいます。また、飲み薬以外に点眼液や点鼻液も欲しいという人も多いため、同じ成分の飲み薬があるからと言って、市販薬だけで治療しようと考える人は少ないと予想します。
他にも、医師や製薬会社の立場として考えてみましょう。
医師としては、市販薬に資金が流れてしまうのは困るため、これまでアレグラやクラリチンを処方していた患者に対しては、それとは別のアレルギー薬を処方することになるはずです。
また、製薬会社としても自社の利益を確保するため、アレグラやクラリチンなどと比較して自社の抗アレルギー剤が優れていることを今後アピールしていくものと思われます。
実際、アレグラなどの古い薬に比べて、近年発売されたビラノアやルパフィンといった抗アレルギー薬の方が効果の発現の速さや副作用の少なさなどで優れているとされています。
抗アレルギー薬市場は更に激戦となっていくと予想され、市販薬に流れる人は試算されるほどは多くないのでは、と思います。
しかし、こういった提言がされたことは、医療費削減という観点においては前進したと言えるでしょう。これまでも保険適用外にという声はありましたが、なかなか話が進まないのが現状でしたので。
一方で、医療機関としては難しい選択となります。特に耳鼻科などでは患者数が減って病院の利益にも影響することになります。薬局も同様です。
また、別の観点から考えると、こういった抗アレルギー薬の負担額が話題となったことで、改めて「毎年高いお金を払って薬を飲みたくない」「少し時間がかかっても花粉症を根治させたい」と考える層も増えるのではと思います。
根本治療と言えば、数年前からスギとダニでは舌下免疫療法が始まっていますが、まだその存在自体知らない人も少なくありません。今後はこういった他の治療法も含め、業界の動向に注目していきたいと思います。
遺伝子治療薬、初の保険適用 血管再生1回60万円
ニュース概要
8月28日、国内では初めて「遺伝子治療薬」が保険適用となることが決まりました。
遺伝子治療薬とは体内に遺伝子を入れて病気を治す薬で、今回はベンチャー企業のアンジェスが開発した「コラテジェン」という足の血管を再生する薬が対象となりました。
薬価は60万円(投与1回)で、患者数はピーク時で年1千人弱、販売額は年12億円程度が見込まれています。
日経新聞 2019/8/28
コメント
遺伝子治療薬が初の保険適用となり話題となりました。既に承認はされていましたので、今回は金額(薬価)がどれくらいになるかが注目されていました。
結果は60万円で、国内で前例のない薬ということもあり評価は難しいですが、市場では「安すぎる」と判断され、開発したアンジェスの株価は急落しました。
確かに、先日ノバルティスのキムリアが3349万円という最高額で薬価が決まったというニュースに比べると、かなりインパクトの欠ける結果となりました。
同じ遺伝子治療薬でも、欧米ではより高値となるケースがあります。これは、日本と欧米の薬価の決め方の違いにも影響しています。
日本では、薬価を決める際原価からはじくという独自の方式がありますが、欧米では主に薬の治療効果を重視して薬価が決められます。遺伝子治療薬はその効果が高いとみなされているため、欧米では高値となるのです。
薬価が思ったよりも安くついたことは財政負担などを考えると良いことかもしれませんが、薬が過小評価されたとも言えます。薬価のつけ方を見る限り、日本より欧米の方が薬を正しく評価しているのではないかな、と思います。
しかし、遺伝子治療薬は多くのベンチャー企業が大手製薬などと共同で取り組んでいる、今後も注目される分野の薬です。今回のコラテジェンが承認され、販売されることになれば他の開発している企業の目標となります。
実際に使われて明確な効果がみられるようであれば、今後の遺伝子治療薬の評価上昇にもつながるかもしれません。そういった意味で、今回のコラテジェンの保険適用は、大きな一歩になったのではと思います。
今回の薬は「慢性動脈閉塞症」という、手足の血管が詰まる疾患を対象としていますが、遺伝子治療薬には様々な可能性があります。大半は明確な治療薬のない、ニッチな疾患を対象としていますが、遺伝子治療薬が増えることで、難病治療に対する考え方も変わっていくのではないでしょうか。
また、扱う薬が変われば、当然薬剤師としてのあり方も変わっていきます。遺伝子治療薬が今後の医療にどのような影響を与えるのか、期待しています。
まとめ
今回は、
- 市販薬の薬物乱用問題と販売するドラッグストアの対応について
- 一部の花粉症治療薬の全額自己負担化によってどう変わるか
- 遺伝子治療薬の保険適用化の影響について
を考えてみました。どれも今後も動向が気になるニュースばかりでしたね。
花粉症治療薬の問題は特に、薬剤師にとっては影響の大きい話題ですので、今後実際に自己負担化された後に世間がどのような反応を見せていくのか、注視していきたいと思います。
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