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勤続年数が長くなり後輩ができると、現場業務と並行して教育係を任されることもあると思います。新人の教育・指導には皆さん頭を悩ませていると思われますが、それは薬剤師としての模範となるような人材育成をするという重要な役割を担っているからです。
しかし、企業のコンプライアンスが重要視される昨今、業務上必要な指導や注意もパワハラだと思われてしまうというリスクが常について回ります。
一方で、優しすぎると本人に指導の意図が伝わらなかったり、ミスの原因となり患者さんに迷惑がかかったりしてしまうことも...。そのため、指導方針が定まらずに部下の教育に頭を抱えてしまう薬剤師さんも多いのではないでしょうか?
「パワハラは御法度!でも『医療人としての気付き』に気付いてもらわないのは、医療人としてもっと御法度! 」と吉江隆範(よしえ・たかのり) さんは語ります。若手薬剤師のやる気を損なうことなく医療人として育てていくためには、どのように指導していけば良いのでしょうか?
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話を伺った人:吉江隆範(よしえ・たかのり) さん
ファルマプリベ薬局 薬局長・社長付特命係長。ファルマとは英語で『薬、薬局』プリベはフランス語で『プライベート』を意味する。患者さんが日々の生活の中で困っているとき、悩んでいるとき、処方箋がなくてもいつでも利用してもらえる空間でありたいという代表の強い想いが込められている。
教育・指導は“気付き”のお手伝い
――「ファルマプリベ薬局」では薬学部実習生の受け入れを積極的におこなっていると聞きました。吉江さんが教育・指導で大切にしていることは何でしょうか?
吉江さん:本人の「メリット」と「疲労」の共有です。
学生さんや新人さん自身が「何を求めていて、どうなりたいか?」を理解し、それを獲得できるというメリットを明確にする。この点が合致していないとお互いにずれてきちゃいますし、強制になっちゃう。だからしっかり話し合います。接客業もそうだと思うのですが、まずお互いのニーズを共有しないと。
そして忘れてはならないのが、「疲労」度合いに常に目を光らせること。こちらがどんなに気を遣っていても、夢中になると本人も無意識のうちに「疲労」が蓄積してしまうことがありますから。「疲労」が一番怖い!しっかり休むこと、スイッチオフの期間を作り、リラックスして自分の時間を楽んでもらうことを大切にしています。
――若手薬剤師さんにできるだけ長く続けてもらうために、あまり厳しく指導しない、褒めて伸ばすなど教育に頭を抱えてしまう薬剤師さんは多いようです。
吉江さん:たしかに厳しすぎると、相手の成長意欲を損なう可能性もありますよね。ただ一方的に間違いを叱るのではなく、なぜそれがいけないのか、どこに問題があったのか「自分で気づく力」を持ってもらわなければ成長につながりません。
つまり、叱ること自体にほとんど意味がないと思っています。もちろん例外はありますが。
ぶっちゃけ怒っちゃったときってほとんど指導者側のジレンマだと思うんですよ。「どうしてわかってくれないんだ!」って言う。私も人として完璧ではないですし感情的になることもあります。でも、そんなとき本当は「やべ!やっちゃった!」って思っているので、実は相当慎重に、冷静な自分も保ちながら叱っています。ですのでクールダウン出来たら怒っちゃたこと必ず謝るようにもしています。
まぁ実際、怒らなければ気付かなかったこともあるようで、のちのち逆に感謝されることも少なくないです。はっきりとは言えませんが、そこには前提で作っておいた「メリット」の合致があり更にハートが乗っかっていたんだと思います。運よく叱ることが効果的な場合もあるとは思いますが、それは本当に賭けです。
――逆説的にいえば、何でも気軽に悩み相談ができる関係ができていたら、「自分のためを思って叱ってくれているんだ」「向き合ってくれているんだ」とポジティブに捉えられるようになりますよね?
吉江さん:そうとは限らないです。それを指導側が無意識に期待してしまうことがダメだと思います。
指導が厳しいかどうかは指導される側の捉え方次第ですので、答えはありません。だから叱らないが正解だし、叱ることがリスクであることに変わりはない。一番の理想はポジティブで自主的な気付きです。
さらに怖いのは「叱ることでの気づき=自分を変える=自己否定」という部分を含んでいるという事。この一連の作業では想像以上のエネルギーを消耗します。お互いに体力勝負になりますし、余程の信頼関係がないと達成できません。
そこで、先ほどの「疲労」に目を光らせるが重要になってきます。「疲労」は人を潰してしまう。
側で寄り添い見守りながら、必要に応じて疲れたら休ませてあげる、うまくできたら褒めてあげる。ときにはそっと見守る。その上で目的を共に達成するために協力する姿勢見せる事を大切にしています。
――叱ることには相当なリスクを伴うわけですね。
吉江さん:そうなんです。悩み相談ができるような関係性を築くまでには、時間も労力もかかりますし、そんな関係性が築けたらラッキー!くらいに考えています。そもそも誰にだって「合う合わない」がありますからね。生理的に無理!みたいな(笑)。
――信頼関係を築くうえで大切にしていることはありますか?
吉江さん:先ほども言いましたが、協力する姿勢を見せる事。つまり、どんなときでも相手の味方でいることです。「同じことを繰り返し注意しているのになかなか改善されない!」「直らないからもう知らない!」と途中で見捨てたりせず、渡り鳥の親鳥のように1人で飛べるようになるまで、一緒にパタパタと伴走することがとても大切なんじゃないかと思っています。
薬剤師としての「やさしさ」を育てるために
――学生さんに「気づき」を増やしてもらうため具体的にどんなことをしていますか?
吉江さん:「ヒューマンウォッチング」です。患者さんが来局されたときの表情、顔色、目の動き、仕草を見て総合的に患者さんが求めているニーズやウォンツを想像します。急いでいるのか、じっくり話を聞いて欲しい人なのか、学生さんと一緒に考えるんです。
僕は相手の立場になって、いろいろと想像できることが「やさしさ」だと思っていて「ヒューマンウォッチング」を一緒に繰り返していくと、学生さんに「相手目線=やさしさ」が少しずつ育っていきます。その「相手目線=やさしさ」の芽が、学生さんが薬剤師さんになったときに「やさしさ」という薬剤師としての大きな幹になればいいなと思っています。「相手目線=やさしさ」は僕が学生さんの心に仕掛けたの秘密のタイムカプセルですね((/ω\))。
――……ロマンチック!
吉江さん:もちろん「ヒューマンウォッチング」なんてやったことのない学生さんばかりです。だから、当然うまくいかない。そこでどうするかというと、ヒューマンウォッチングの前段階として患者さんへの対応をシミュレーションする「ロールプレイ」を頑張ってもらいます。
ポイントはロールプレイのシナリオをこちらで提供するのではなく自分で作ってもらうこと。自分で作ったシナリオに対して、患者さん役になったり薬剤師役になったりして「本気」で演じながら、いろいろな角度で体感してもらい一緒に検証します。こういった体験からだんだんと人の気持ちについて想像ができるようになるわけです。
座学では学べない患者さんとの関わり方を背中で見せていく
――吉江さんは患者さんに対しても薬学部実習生に対しても、常に真正面から向き合っているんですね。
吉江さん:そうですかね!?真正面が何なのかはよくわかりません(笑)。強いて言えば嘘はつかないよう、表面的な言葉は使わないよう気を付けています。あとは・・・・無理はしないようにしているかなー? とは言え、人間無理しないようにするとだらけちゃうので、プロ意識を持って仕事をすることも信条にしています。
――吉江さんにとってのプロ意識とは何でしょうか?
吉江さん:患者さんの命を預かっているという責任感です。学生さんには必ず例え話として自動車運転免許の話をします。免許を取ったばかりの頃って、スピード違反をしない、一時停止は守る、ブレーキとアクセルは絶対に踏み間違えないとか、ありとあらゆることに神経をつかって慎重に運転しますよね。しかし、慣れてくるとちょっとした気の緩みから慎重さを忘れる。薬剤師免許も同じ。プロ意識の欠如が事故につながる。 薬剤師は人様の命に関わる責任のある仕事。だからこそ、常に緊張感と責任感を持って仕事に取り組む意識を持ち続けなければなりません。当然勉強もするし、ゆっくり休んで心と体を休める、体調がすぐれないときは無理をしない!子供たちと遊んで!お酒飲んで!寝ます!
まとめ
ちょうど実習期間中だった学生さんからも話を聞きましたが、生き生きとした目で自信をもって実習を振り返っていました。きっと充実した実習だったのでしょう! 今回の取材を通して、教育・指導だけでなくどんな時でもヒトと真剣に向き合う吉江さんの温かさを垣間見ることができました。ネームプレートは終始ひっくり返ってましたけどね!ちょっぴり、おちゃめな吉江さん!これからも頑張ってください!
ファルマプリべ薬局
住所:さいたま市浦和区常盤9-19-9 武蔵野ビル1F
営業時間:月火木金9:00~19:00 水9:00~17:00 土9:00~13:00
閉局曜日:日曜、祝祭日
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