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医療業界では、日々様々な出来事が起きています。しかし、普段仕事が忙しいとなかなかニュースをチェックする時間がないという人もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、2018年の前半に起きた薬剤師関連のニュースを3つ取り上げています。それぞれについて、実際に働いている薬剤師の目線から、どのようなことを感じたかについてお伝えさせていただこうと思います。
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製薬業界 一人負けの薬価改定
ニュース概要
18年4月からの薬価制度では、一部の特許切れ医薬品の薬価が段階的に後発品と同水準まで引き下げられ、新薬創出加算も削られることになりました。
診療報酬本体部分が引き上げられ、医師、歯科医師、調剤薬局にとってプラス改定となったことを考えると、1人負けの薬価改定だといえます。
日経新聞 2018/2/28
コメント
製薬会社は、今1つの岐路に立たされているのかと思います。その1つが、国が進める後発医薬品の使用促進です。
2018年の調剤報酬改定で、調剤薬局の後発医薬品調剤体制加算は75%にまで引き上げられ、特許の切れた医薬品は積極的に後発品に変えていく流れになってきています。
記事にあるように、薬価改定においても特許切れ医薬品の薬価は大幅に下げられ、2022年には後発医薬品の市場規模を下回る見込みとなっています。
そうすると製薬会社としては新薬を作ることに注力しなければならないのですが、今後は画期的な新薬を作るのは一層難しくなるのではと考えています。
年間の売り上げが1,000億円を超える医薬品をブロックバスターと呼びますが、それだけの売り上げが期待できる医薬品は血圧や高脂血症など、いわゆる生活習慣病に対する薬がほとんどです。
しかし、近年はそれらの薬も飽和しており、新しい薬効の薬を創るのは難しくなっています。実際、血圧の薬などは2剤を合わせた合剤を発売したり、剤形を変えて発売したりして特許切れによる売り上げ減を防ぐのが精一杯という印象です。
もちろん、まだ効果的な薬が創られていない病気も多く、今後はよりニッチな病気に対しても研究開発を行わなければならないでしょう。
しかし、そのためにはこれまで以上に研究開発力が必要になります。では、今後製薬業界はどうなっていくのか、私は国内企業の合併が進むと考えています。
現在、日本の医薬品市場は米国、中国についで世界でも3番目の規模です。一方で、製薬会社の売り上げランキングを見てみると、国内の製薬会社最大手の武田薬品でも19位となっています。日本は、市場規模に対して製薬会社各社の規模が小さすぎるのです。
近年、欧米の製薬会社は積極的なM&Aを行っています。規模を大きくすることで研究開発にも力を入れることができているという現状があります。
それに対して企業規模で劣る国内の製薬会社は、研究開発においても欧米に遅れを取る形になるのではと思っています。
生き残るためには、企業規模を大きくして欧米並みの研究開発を行う必要があると思います。最近は国内の大手製薬会社同士の合併というのは行われなくなっていましたが、今後は業界再編の動きが加速してもおかしくないと感じています。
調剤薬局に勤める身としては、今後の製薬会社との付き合いが変わっていくのかなと感じています。これまでは病院との関係ほどではないにしろ、調剤薬局も製薬会社と良い関係を築いていました。
しかし、今後は調剤薬局としては後発医薬品を積極採用していかなければならず、新薬の製薬会社は後発医薬品を採用する上で障害となることもあります。
病院と製薬会社との関係性は今後も大きく変わることはなさそうですが、調剤薬局とに関しては、ある程度割り切った関係性になっていくように思います。
アマゾン、医薬品通販に参入
ニュース概要
6月28日、米アマゾン社が処方薬のネット販売を手がけるピルパックという会社を買収しました。医薬品事業に参入することで、ドラッグストア業界にも大きな影響が出るものと考えられます。
日経新聞 2018/6/28
コメント
大手企業が新規分野に参入する際に、トップシェアを誇る企業をM&Aで買収するというケースは特に海外では非常に多いようです。
今回のアマゾンのケースでは、自身の巨大な流通網と、買収したピルパックの医薬品に関する流通ノウハウをあわせることで、これまでにないサービスが期待できます。アマゾンの参入によって、医薬品のネット販売事業は競争が激化していくのではないでしょうか。
しかし、ネット販売が一般的に普及するにはまだしばらく時間はかかりそうです。特に日本では医薬品のネット販売は一部の大衆薬しか認められていません。
医療用医薬品となると、Drからの処方と薬剤師による服薬指導が必要となりますので、他の商品のように「ただ受け取れば良い」というわけにはいかず、まだハードルは高いというのが従来の見方でした。
しかし、その流れも少しずつ変わりつつあります。今年に入り、調剤薬局大手のアイン薬局が愛知県の国家戦略特区でオンライン服薬指導を開始しました。薬剤師がオンラインで服薬指導を行い、後日郵送にて医薬品が届くという仕組みになっています。
今後このオンライン服薬指導が広く一般的になることで、ネット販売の需要も拡大していくのではないでしょうか。
では、薬剤師としては、この流れをどう受け止めればよいのでしょうか。仮に、処方せん医薬品のネット販売が解禁になったら、特に需要があると考えられるのは介護施設や自宅介護で寝たきりの患者や、足腰が悪く外出の難しい高齢者などです。
現在は、これらの調剤薬局に薬を受け取りに来るのが難しい患者さんに対しては、在宅医療として薬剤師が直接訪問し、服薬指導をするというケースが増えてきています。
介護施設や患者さん宅などに薬剤師が毎回訪問しなければならないので、薬剤師にかかる負担は大きいですが、在宅患者訪問薬剤管理指導料というものが算定できますので、薬局としては在宅医療を受け持つことで大きな利益となります。
これが、ネット販売解禁によってアマゾンなどが直接薬を届けるようになると、薬剤師としては直接出向くことがなくなりますので、体力的には楽になりますが、薬局の利益としては落ちてしまうことが危惧されます。
「薬剤師の負担が減るようになる」と考えればプラスに見えますが、「仕事量も減ったし薬剤師は今ほどいらないよね」と捉えられ薬剤師の需要が減るようなことになってしまうことが心配です。
しかし、調剤においては特に一包化など、人の手が必要な工程はありますし、たとえオンラインになったとしても薬剤師による服薬指導は必要不可欠なものです。
時代が変わっても需要がなくなることはありませんので、時代の変化にしっかりついていけるように準備しておくことが大切かなと思います。
星薬科大、AIで学生の学習支援 システム導入
ニュース概要
星薬科大学は、AIなどを導入した学生の学習支援システムを導入する。患者との会話のシュミレーション能力向上や、薬剤師の国家試験対策にも役立てられる予定です。
日経新聞 2018/6/5
コメント
私が薬剤師国家試験を受験したのは10年前のことですが、その時と比べると勉強方法も大きく変わったと思います。
AIを利用して効率的に、かつ記憶が定着するような勉強ができるようになれば、試験対策としてはもちろんですが、薬剤師として働き始めてからも役に立つシステムになると思います。
薬剤師国家試験に限らずですが、試験勉強は短期間で覚える詰め込み型の勉強法になってしまうことが多く、試験が終わった後まで内容を覚えておくのは難しいものです。
しかし国家試験対策として勉強した内容は、合格した後も薬剤師として働くうえでの基礎知識となります。AIの補助で知識を定着させることができれば、薬剤師全体の知識の底上げにつながると思っています。
また、患者さんとの会話をシュミレーションしてAIが判定する、という方法は、特に学生に対しコミュニケーションスキルを磨くために効果的だと思います。
学生のうちに接客スキルを学ぶ機会は少なく、働き始めてから対応に苦労するという薬剤師も少なくありません。
もちろん実践とはまた異なりますので注意が必要ですが、状況に応じて様々な対応を学ぶことができるというのは大きなメリットかと思います。
薬剤師は、会話の中から患者さんの情報を引き出す力が求められます。例えば、「最近体調が悪くて…」という話を聞いたら、その症状から、今服用している薬の副作用である可能性はないかなどを考えなければなりません。
「他の病院でこの間処方された薬があって…」という話をされたら、今回処方されている薬との併用に問題がないかを調べる必要があります。
これらは、患者さんとしっかりコミュニケーションが取れて初めてわかる情報です。薬を調剤、監査して渡すだけなら、それこそAIで事足りる業務です。
今回のAIによるシュミレーションがどういった内容かはわかりませんが、経験を積み、コミュニケーションスキルを磨くことで、いざ薬剤師として働き始めたときに、即戦力となっていけると思います。
まとめ
今回は特に印象的な記事を3点ピックアップしましたが、医療業界は日々新しい変化が起きています。特に、医薬品のネット販売やAIによる学習支援システムは、これからの時代に必要とされる新しい分野だと思います。
いざ自分が使う立場になったときに対応できるように、普段から情報収集しておく必要はありそうです。ニュースを読んだ時に、ただ内容を理解するだけではなく、自分なりの考えをしっかり持っておくということは非常に大切です。
今回は私の考えを述べさせていただきましたが、あくまで1つの考えに過ぎません。今回の内容が、日々ニュースを読み進める上でのご参考になれば幸いです。
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