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近年、薬剤師を取り巻く環境は大きく変わっています。前回から、薬剤師に関連するニュースを取り上げて解説をしていますが、今回は、9月後半に起きたニュースについて取り上げています。
それぞれについて、現場で働く薬剤師の目線から感じたことを論じていますので、1つの見方として参考にしてみてください。
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後発薬、難路の創薬に挑む
ニュース概要
後発医薬品市場は近い将来頭打ちになることが予想されており、新たな収益モデルを確立させるため、創薬に挑む後発メーカーも出てきています。しかし、創薬の難易度は高く、リスクの高いチャレンジになります。
日経新聞 2018/9/17
コメント
現在、後発医薬品市場は大きな転換期を迎えています。今回の記事を読んで、今後数年で後発品市場はこれまでとは全く異なる方向へ進んでいくんだろうなと感じました。
ここ数年、後発医薬品市場は、国の政策によって急激に拡大してきました。調剤薬局としても、後発率を高めることによって後発医薬品調剤体制加算を取ることができるというメリットがあるため、多くの薬局が積極的な後発品変更を進めています。
実際、後発医薬品調剤体制加算は2008年度に新設されましたが、調剤報酬改定のたびに後発率が引き上げられ、2014年度には55%以上、2016年度には65%以上、先の2018年の改定では75%以上でなければ加算が取れなくなっています。
調剤薬局としては、今の水準で限界を感じている店舗は少なくありません。その理由は、後発品を案内しても「絶対に先発品がいい」という人が一定数いることや、Drから「この先発メーカーだけは変えないでくれ」と頼まれることがあり、薬局の努力だけではどうしようもない部分があるからです。
政策としては後発医薬品の割合は2020年までに80%とすることが目標とされています。現在よりもう少し引き上げられる形となりますが、80%を超える数値を求められる可能性は低いというのが現在の見方です。
そのため後発医薬品の市場は近い将来頭打ちとなり、後発メーカーは既存のシェアを各社が奪い合うかたちになっていくのかと思います。
しかし、後発医薬品というのは他社との差別化というのが非常に難しいものです。
先発医薬品では系統は同じであっても成分が異なりますので、各種試験によって他社製品との差別化をすることができますが、後発医薬品は成分や薬価が同じであるため、違いがつけにくいのです。
そこで、後発メーカーの中には今回の記事にあるように、後発品だけでなく新しい薬を開発していくなどのチャレンジをして生き残りを図る企業が増えていくものと思われます。
しかし、創薬は大手製薬メーカーが巨額の研究開発費をかけても上手くいかないことも多く、これまでに経験のない後発品メ-カーがチャレンジするのはかなりのリスクがあると思います。
特に、例えば糖尿病薬など大手メーカーがこぞって新薬開発しているような分野では、後発メーカーが今から参入したところでとても太刀打ちできるものではないと思います。
そこで、後発メーカーは他の製薬会社があまり開発していない「ニッチな分野」に狙いを絞って開発を進めていくのではないかと思います。今回の記事を見ても、そういった傾向が強いように感じました。
また、業界再編も進んでいくと思います。近年の市場の急拡大に伴って、多くの後発メーカーが生まれましたが、今後は大手以外のメーカーは生き残るのが難しくなるでしょう。
現場で働く身としては、同じ成分で10社、20社と後発品を出したところで、違いがわかりません。
「後発品は1社だけでいいのに」と思うこともあります。結局「安心できるから」といった理由で知名度のある大手後発品メーカーに決めることも多く、知名度、会社規模といった要素が今後生き残るカギになりそうです。
薬情を郵便以外でも配送可‐運送業者の新規参入視野
ニュース概要
経済産業省は、処方薬を郵送する際に同封される薬剤情報提供書が信書ではなく、「貨物に添付する添え状または送り状」であるとの見解を示しました。これにより、薬情を日本郵便以外の方法で郵送することが可能になりました。
薬+読 2018/9/19
コメント
薬情-「薬剤情報提供書」が、日本郵便以外の宅配業者でも郵送することが可能になりました。
一見すると「なんの意味があるの?」と思われるニュースですが、薬情の取り扱いが明確にされたということに大きな意味があると考えています。
これまで、患者さんに薬を郵送するときに、多くの薬剤師はどんな手段で送ればいいのかわからず悩んでいました。明確なルールがなく、あいまいなまま対応していた薬局が多かったと思います。
今回、日本郵便以外の方法でも薬情を処方薬と一緒に送ることができると決まったことで、処方薬を宅配するケースは増えていくと思います。
昨年には、同じくグレーゾーン解消制度で「服薬指導後の薬剤の配送は合法」という判断がされています。
そのため、患者さんは薬局にて先に服薬指導さえ済ませておけば、薬局で待たずにWeb決済したり、後日薬を郵送してもらうなどの対応が可能となるため、待ち時間の削減につながります。この対応は、今後多くの薬局で取り入れられると考えています。
また、最近ではオンライン服薬指導が国家戦略特区という一部地域で始まっています。その場合も医薬品と合わせて薬情を送る必要があります。
今後普及が見込まれる中で、「薬情」というものの扱いが明確になったことは、薬局にとってはありがたいことで、非常に意味のあることだと思います。
製薬大手、抗菌薬から撤退相次ぐ 開発費高騰も少ない承認件数
ニュース概要
製薬大手のノバルティスが今年7月に抗生剤の分野から撤退することとなりました。薬剤耐性菌が世界的に問題になっていますが、抗生剤の開発は莫大なコストがかかる割に費用対効果が低く、製薬会社が積極的に開発するメリットは薄れています。今後も、ノバルティス同様抗生剤から撤退する企業が増えてくる可能性があります。
SankeiBiz 2018/9/25
コメント
薬剤耐性菌に関しては、近年国内外で問題となっています。本来は必要ない患者に対してもむやみに抗生剤が処方されている現状があり、抗生剤の使い過ぎが耐性菌の発現につながっているとも指摘されています。
抗生剤に関しては国内でも適正使用のための体制が整備されてきていて、小児科では抗生剤を処方しない理由を説明し、文書を提供した場合に「小児抗菌薬適正使用加算」という加算が新しく作られました。
今の薬剤に耐性のある菌が出てくると、今度はその耐性菌を殺すための新たな抗生剤を開発しなければなりません。
いたちごっこになってしまう可能性もありますが、世界各地で新たな薬剤耐性菌が出てくる中で、今後も新薬の抗生剤を作ることは必要不可欠といえます。
しかし、そういった国の施策に対して、製薬会社の対応は遅れています。記事にもあるように、製薬会社が抗生剤の開発に対し投資をしなくなってきているのです。
現在、私は小児科門前の調剤薬局で働いていて、過去には製薬会社でMRとして働いた経験もあります。
そのどちらでも、現在の医薬品市場における抗生剤の立ち位置はあまりに低いと感じました。
最近では抗生剤の分野で画期的な新薬が出ることも少なく、今後もその可能性は低いといえます。
医療現場としては、耐性菌が出ないようにできる限り抗生剤の使用を控える、といった程度しか対策できていないのが現状です。
また、私がMRとして働いていた製薬会社も以前は抗生剤に力を入れていましたが、現在の主力製品は高血圧や高脂血症、糖尿病などのいわゆる循環器系の薬に切り替わっていました。
なぜ抗生剤に注力しなくなったのか、その理由は単純です。抗生剤の新薬開発が「コストに見合わない」「儲からない」のに対して、循環器系や抗がん剤といった分野の薬の方が安定処方が見込まれ、薬価も高く儲かるからです。
世界的大手のノバルティスが抗生剤から撤退したことで、今後同じように撤退を表明する企業が増えてくるかもしれません。
製薬会社も営利企業なので、割に合わない研究はしないという考えは理解できます。例えば抗生剤の開発に対して国が補助金を出すなど、製薬会社だけの問題と考えずに業界全体の問題として取り組んでいくべきことだと思います。
まとめ
後発医薬品に関しては、今後大きな転換期を迎えますので、今回の記事に限らず動向をチェックしておいたほうが良いかもしれません。
また、2つ目の薬剤情報提供書の記事に関しては、遠隔服薬指導に大きく関わりのある内容でした。遠隔服薬指導が今年に入り始まっている中で、まだルールの明確化がなされていない部分もあり、今回の記事のように少しずつ明確になって整備されていくものと思われます。
抗生剤に関しては、現場としては薬剤耐性菌の発現が何よりも危惧されるところです。一薬剤師としてどうすることもできない問題ではありますが、今後の各社の対応を注視したいと思います。
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