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スポットワーカーが増えている理由とは?【専門家が解説】ワーカー547人に稼いでいる額や使い勝手など本音を調査
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単発で短時間の仕事を請け負う「スポットワーカー」が注目されています。スポットワークの仲介サービス会社の増加などにより、スポットワーク登録者数は約2200万人に上っているとの調査もあります。
スポットワーカーがなぜここまで注目されるようになったのか、スポットワーカーとして働くメリットとデメリットなどについて、株式会社人材研究所代表で組織人事コンサルタントの曽和利光さんに伺いました。
話を聞いた人
株式会社人材研究所
代表取締役社長
曽和利光(そわ としみつ)
1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。
『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』(WAVE出版)、『シン報連相~一流企業で学んだ、地味だけど世界一簡単な「人を動かす力」』(クロスメディア・パブリッシング)など著書多数。
取材・ライティング
伊藤理子(いとう りこ)
フリーエディター・ライター。経済専門紙記者、日経ホーム出版社(現・日経BP)編集、金融情報記者、リクルート「週刊B-ing」「リクナビNEXT」編集などを経て、フリーに。Webサイトや情報誌などで仕事、キャリア、ビジネス、教育分野などのテーマを中心に取材・執筆活動を行う。
※当サイトは口コミの一部を掲載しています。
この記事の目次
スポットワーカーとは?流行している理由
そもそもスポットワーカーとは何を指すのか、そして最近注目され流行している理由は何なのか、専門家である曽和氏に伺いました。
「スポットワーカー」の意味
スポットワーカーとは、英語の「Spot(スポット)」と「Work(ワーク)」を組み合わせた造語で、短期間で単発の仕事を請け負う労働者のことを指します。
アルバイトやパートと似ているように見えますが、アルバイト・パートは単発・短期間であっても継続した雇用関係が発生しますが、スポットワーカーは業務委託契約であり社会保障が発生しません。単発仕事であるという気軽さや、履歴書の提出なども不要である点が特徴です。
スポットワーカーが増えている理由
一般社団法人スポットワーク協会によると、2024年5月末時点でのスポットワーク登録者数は約2200万人に上り、2023年3月末の約990万人に比べると1年超で約2.2倍に拡大しています(※1)。
実質賃金低下を受けた収入減の穴埋め
登録者が増えている背景としてまず挙げられるのは、「実質賃金の低下」です。
実質賃金とは、労働者が受け取った給与(名目賃金)から物価の影響を差し引いたものですが、働き手1人当たりの実質賃金は2024年5月まで実に26ヶ月連続のマイナスを記録しました。
6月にわずかながら27ヶ月ぶりのプラスに転じましたが、26ヶ月連続マイナスはリーマンショック後よりも長く、家計を圧迫しています。(※2)
つまり、給与が減った分を穴埋めするため、会社員がスポットワーカーとして働いているケースが多く、新たな収入減として注目されている格好です。
(※2)厚生労働省「毎月勤労統計調査」(令和6年5月分結果確報)
高齢者の「働きたいニーズ」拡大
また足元では、高年齢層がスポットワーカーとして働くケースが増えつつあります。
定年退職後の収入を確保したい、社会との接点をもちたいというニーズに加え、健康寿命の延伸もあり、高齢者の働く意欲が高まっています。
継続的ではなく、空いた時間にいろいろな仕事を経験してみたいとのニーズも高く、高齢者の流入が市場拡大を後押ししています。
一方、労働人口の減少による人手不足が深刻化していることから、スポットワーカーに注目する企業も増えています。
特に飲食や物流、販売サービスなど、より人手不足に悩んでいる業界が、「スポットであっても来てほしい」とスポットワーカーを活用するケースが目立っています。
代表的な仲介サービス会社
スポットワーカーの仲介サービス会社としてまず挙げられるのが「タイミー」と「シェアフル」です。
タイミーは2018年、シェアフルは2019年にそれぞれサービスを開始し、市場拡大を担ってきました。
そして近年では、「スキマワークス」や「ショットワークス」などのほか、メルカリの「メルカリ ハロ」やリクルートの「エリクラ」など、大手も相次いで参入しています。
このようにスポットワークのプラットフォーマーが相次いで登場したことも、市場の急拡大につながっています。
今回「ミライトーチ」で独自に行ったスポットワーカー547人へのアンケートでも、「使っているサービス」の1位はタイミーで、2位はシェアフルとなりました。
「その他」が32.8%と一番多いことを見ると、多様なサービスが進出してきていることがわかります。
1 | その他 | 226人 |
---|---|---|
2 | タイミー | 198人 |
3 | シェアフル | 70人 |
4 | メルカリ ハロ | 60人 |
5 | ショットワークス | 38人 |
6 | スキマワークス | 36人 |
7 | ツナグ | 30人 |
8 | ワクラク | 28人 |
スポットワーカーとして働く547人にアンケート調査!月いくら稼いでいる?働いた本音を紹介
実際にスポットワーカーとして働いている547人にアンケート調査を実施。月の稼ぎや働いてみた感想をまとめて紹介します。
調査対象:スポットワーカーとして働く547人
調査地域:全国
調査期間:2024年8月7日〜8日
調査主体:ミライトーチ編集部
調査委託先:crestep
月に1回働いている人が39.5%と一番多い!59.5%の人が20,000円以下と少額を稼ぐ
スポットワーカーの547人に「月に何回働いているか」について聞いたところ、「月に1回」が一番多く39.5%でした。
次に多いのは「月に2〜3回」の28.5%で、単発バイトとして活用されていることがわかります。
また「月にいくら稼いでいるか」について聞いたところ、20,000円以下の少額の人が全体の59.5%となりました。
スポットワーカーとして働いている業種は「倉庫内・軽作業」が一番多く177人
スポットワーカーとして「どの業種の仕事をしているか」について聞いたところ、「倉庫内・軽作業」が一番多く177人でした。
今回はスポットワークの主な業種を選択肢にしましたが、次に多いのは「その他」の115人となり、多様な業種の募集があることがわかります。
スポットワーカーとして働く理由1位は「生活費のプラスに」
スポットワーカーとして働く理由については「生活費のプラスに」が圧倒的に多く321人でした。
2位は「スキマ時間を有効活用」で186人、3位は「単発なのでしがらみがなくラク」で138人となり、時間に縛られずに気楽に働けることが選ばれている理由のようです。
スポットワーカーとして働いてみた感想1位は「スキマ時間にお金を稼げて便利」
スポットワーカーとして働いてみた感想で一番多かったのは「スキマ時間にお金を稼げて便利」で289人でした。
注目なのは、3位「給料が安く待遇に不満」、4位「未経験業務だと慣れるのが大変」、5位「求人が少ない」、6位「職場の当たり外れが大きい」とネガティブな意見が続くことです。
実際に働いてみて気づいたデメリットもあるということでしょう。
スポットワーカーとして働くメリットとデメリット
スポットワーカーにはどんなメリットとデメリットがあるのか、働く側と企業側に分けて専門家の曽和氏がそれぞれ解説します。
働く側のメリットとデメリット
メリット1. スキマ時間を有効活用でき、気軽に働ける
働く側のメリットとしてまず挙げられるのは、日常のスキマ時間を活用して収入が得られる点。そして、「その場限りの一期一会の仕事であり、後腐れがない」点も大きなメリットです。
スポットワークは基本的に、1回限りのスポットで働くことができます。
継続的な雇用関係が発生するアルバイトやパートでは、仕事内容が合わなかったり、職場の人間関係に嫌気が差したりしてもそう簡単に辞めるわけにはいきませんが、スポットワークであれば二度と行かなければいいだけ。
人間関係は合うだろうか、仕事は合うだろうか…などと不安を抱くことなく気軽な気持ちで働けるのは、メリットといえるでしょう。
メリット2. いろいろな仕事を経験できる
スポットワークを活用して、いろいろな経験を積むことができる点をメリットと捉えている人もいます。例えばアルバイトや派遣から正社員への転職を目指している人や、未経験分野への転身を目指している人など。
スポットワークで気になる仕事を経験すれば、「自分はその仕事に向いているか・いないか」を判断することができるでしょう。
また、単発ながらも志望する仕事の経験を積むことで、採用選考でアピールできる材料を増やすことも可能です。スポットワークを上手に活用して、キャリアに活かす人も今後増えてくると考えられます。
一方のデメリットは、「安定的な雇用ではない」という点。必ず一定の金額が得られるアルバイトやパートとは異なり、時期やエリア、仕事内容によっては求人が少ないケースもあり、「働きたいのに働けない」ことも考えられます。
つまりスポットワークは、「自由度」と「安定性」がトレードオフの関係にある、と理解しておくことが大切です。
企業側のメリットとデメリット
人手不足に悩む企業にとっては、スポットワーカーの増加はウェルカムです。どうしても人手が足りない、今日1日だけでも誰かに手伝ってほしいという場合、すぐに募集でき人材を集められるのは最大のメリットです。
ただ一方で、採用選考がいっさいなく、スポットワーカーの素性もわからないため、どんな人が来てくれるのかは未知数です。
仕事に前向きに取り組まない人、やる気がなく時間をつぶして収入だけ得ようとする人もゼロではないため、そういうリスクを背負わねばならない点はデメリットといえるでしょう。
また、単発仕事であるため、誰でもすぐに取り組めるような単純作業がメインになります。一定の知識やスキルの習熟を必要とする仕事を任せるのは難しく、活用できる範囲は限定的になるでしょう。
スポットワーカーに関する素朴な疑問
スポットワーカーに関する働く側の素朴な疑問について、いくつかピックアップして曽和氏が解説します。
Q. 正社員でも副業としてスポットで働いていいの?
副業としてスポットワークを活用するのはまったく問題ありません。ただ、勤務先が副業を禁止しているのであれば話は別。まずは就業規則で副業OKかどうかを確認しましょう。
Q. 前日いきなり応募できるもの?
思い立ったときにすぐに応募できるのがスポットワーカーの魅力です。前日どころか当日でも、いきなり応募し働くことも可能。急にできた空き時間も有効活用することができます。
Q. トラブルはない?
タイミーやシェアフルなどといった、スポットワークのプラットフォーマーが登場する前は、スポットワークはいわゆる「日雇い労働」が中心でした。その中には、「事前に聞いていた仕事内容や報酬と違っていた」など雇用者が果たすべき責任が守られていないケースも少なくありませんでした。
ただ、プラットフォームが整備され、参入業者も増えた今は、プラットフォーマー経由での応募である以上、そのようなリスクはほぼないと考えてよいでしょう。
もちろん、スポットワーク先での人間関係のトラブルや、仕事が合わないなどのリスクは考えられますが、嫌だと感じたならば次は選ばなければいいだけ。仕組み的にも、大きなトラブルは起こりにくいでしょう。
スポットワーカーの今後の展望
リクルートワークス研究所では、2030年には約341万人、さらに2040年には約1,100万人の労働供給不足が発生すると試算しています(※3)。
少子高齢化の進行などで、労働人口は明らかに右肩下がりで減少しており、スポットワーカーで穴埋めしないと企業活動が継続できないのは明白。必然的に、企業のニーズは今後も増えると考えられます。
大手企業であれば、スポットワーカーの手を借りなければいけないような単純作業を、システム投資やAI投資をすることで内製化し、生産効率化することで投資額を回収することも考えられます。しかし、投資額が捻出できない、かつ回収も難しい中小企業やベンチャーでは、まだまだスポットワーカーに頼らねばならない場面が多いでしょう。
そして企業側のニーズ拡大にともない、スポットワーカーの人数も増えると予想されますが、「スポットワーカーの中身」は変化すると考えています。
売り手市場を受けスポットワーカーから正社員に転身する若手が増えたり、実質賃金の回復でスポットワークを辞める・減らす会社員が増えたりすることが予想されますが、代わって高齢者のスポットワーカーが増えるでしょう。
スポットワークの市場が拡大する中、元気なシニア層がスポットワーカーの中心になる可能性は高いでしょう。
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