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ゆるブラックとは?【専門家が解説】ホワイト企業の社員560人にゆるブラックの実情をアンケート調査
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「ゆるブラック」という言葉をご存じですか?
長時間労働やパワハラが常態化した「ブラック企業」がある一方で、「ゆるすぎてブラック」という企業があるようです。
この記事では、法令を遵守し働きやすい環境が整っている「ホワイト企業」に勤務するビジネスパーソン560人にゆるブラックに関するアンケート調査を実施。
また、ゆるブラックの意味や現状、そして勤務先がゆるブラックだと感じたときの対処法などについて、株式会社人材研究所代表で組織人事コンサルタントの曽和利光さんに伺いました。
話を聞いた人
株式会社人材研究所
代表取締役社長
曽和利光(そわ としみつ)
1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。
『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『部下を育てる上司が絶対に使わない残念な言葉30』(WAVE出版)、『シン報連相~一流企業で学んだ、地味だけど世界一簡単な「人を動かす力」』(クロスメディア・パブリッシング)など著書多数。
取材・ライティング
伊藤理子(いとう りこ)
フリーエディター・ライター。経済専門紙記者、日経ホーム出版社(現・日経BP)編集、金融情報記者、リクルート「週刊B-ing」「リクナビNEXT」編集などを経て、フリーに。Webサイトや情報誌などで仕事、キャリア、ビジネス、教育分野などのテーマを中心に取材・執筆活動を行う。
※当サイトは口コミの一部を掲載しています。
この記事の目次
ゆるブラックの意味とは?生まれた背景
「ゆるブラック」とは、残業が少なく労働環境は整っているけれど、やりがいや成長実感がわかない企業のこと。
長時間労働を強いたり、パワハラが常態化していたりする企業を「ブラック企業」といいますが、働き方改革の推進やパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)の施行などにより、ブラック企業の数は大幅に減少しました。
その反動として出てきたのが「ゆるブラック」です。
「ゆるブラック」という言葉がメディアなどで使われ出したのは2019年ぐらいからですが、2022年にリクルートワークス研究所が発表した「職場が『ゆる』くて、辞めたくなる」というレポートを機に一気に広まったという印象です。
同レポートでは、大手企業の新入社員のうち36%が「職場がゆるい」と感じていて、職場がゆるいから成長できないのではないかという不安を抱いている人が少なくないことを指摘しています。ゆるすぎる環境で働くことに懸念をもつ人が増えているようです。
私は企業研修や講演などで、多くの若手ビジネスパーソンと交流する機会がありますが、「会社がしんどくなくて何となく不安」「今の環境では成長できない気がする」という声はとても多く耳にします。
【ホワイト企業の社員560人にアンケート調査】どのくらいの人がゆるブラックを感じている?結果を紹介
実際にゆるブラックを感じている人はどのくらいいるのでしょうか?
働きやすい環境が整っている「ホワイト企業」に勤務する20〜30代の社員560人に、ゆるブラックに関するアンケート調査を実施しました。
調査対象:有給取得率が高い、残業が少ないなどのホワイト企業に勤める20〜30代の社員560人
調査地域:全国
調査期間:2024年6月24日〜27日
調査主体:ミライトーチ編集部
調査委託先:crestep
今の会社で成長実感はある?ないと感じる人の理由1位は「給料が上がらないから」
今勤めている会社で「成長を感じているか?」という質問に対して、「とても感じている」「まあまあ感じている」と答えた人が合計55%と多数派でした。
一方「あまり感じない」「全然感じない」と回答したのは合計15.3%であり、この層がゆるブラックを感じているといえそうです。
ゆるブラックを感じている15.3%の人にその理由を聞いてみたところ、一番多い回答は「給料が上がらないから」でした。
給料は会社からの評価の一つですが、スキルや経験値が上がっている実感よりも、わかりやすくお金で評価されていないことが不満につながっているようです。
出世欲は「ある」が48.8%で多数派!「ない」は22.1%で理由1位は「責任を伴うから」
「昇給・出世したい気持ちがあるか?」という質問には、48.8%と約半数の人が「ある」と回答。「給料が上がらない」ことが成長を感じられない理由1位だったこともあり、わかりやすく給料が上がることは歓迎のようです。
「ない」を選んだ22.1%の人に理由を聞いたところ、一番多かった回答が「責任を伴うから」で、「ない」と回答した人の約半数とダントツの結果でした。
仕事観は「仕事とプライベートのバランスを重視したい」が1位
今回の回答者である20代と30代の社会人にとっての仕事観について聞いてみました。
「自身の仕事観で当てはまるものを選んでください(複数可)」という質問には、「仕事とプライベートのバランスを重視したい」が382回答と圧倒的に多いという結果でした。
ゆるブラックは「ゆるすぎてブラック」という意味ですが、ゆるいということはプライベートとの両立も難しくないということになり、ワーク・ライフ・バランスを重視する仕事観ならゆるいことは決して悪くない条件ともいえそうです。
なぜ「ゆるブラック」だと感じるのか?その原因とは
「ゆるブラック」といわれる企業は、残業削減で労働時間が短くなったり、若手を厳しく鍛えるのではなくサポートする姿勢を取っていたりします。
これ自体は悪いことでははないはずなのに、「ゆるブラック」といわれてしまうのは、企業のせいだけではなくビジネスパーソン側にもいくらか原因があると思っています。
個人のキャリア自律が進んでいないから、自由が増えると不安になる
昭和の高度経済成長期は、終身雇用が前提であり、「退職まで会社が面倒をみるから、社員は会社の指示どおりに動け」という時代でした。
転勤や異動を命じられたら従うのは当たり前で、みな社命に忠実でした。
その後、徐々に成果主義が台頭し、「自分のキャリアは自分でつくる」という自律型キャリアが推奨されるようになりました。
ただ、欧米に比べると、日本人は「自分がやりたいことをしたい」という自己実現派はそれほど多くなく、「周りの期待に応え、貢献したい」「承認してもらいたい」という思いが強い傾向にあります。
そのため、「自由に」と言われると何をしていいかわからず、不安を覚えてしまう人が少なくないのです。
つまり厳しい言い方をすれば、働く個人側がキャリア自律できていないのに、それを「働く環境がゆるいから」と会社のせいにしていることが、ゆるブラックの実体であるともいえます。
企業側のサポートが少ないことも要因に
一方で、社員を縛りつけず自由にするだけで、フォローしない企業の態勢に問題があるケースもあります。
日本人に多い「周りの期待に応え、貢献したい」「承認してもらいたい」というモチベーション自体は、決して悪くはありません。
そういう社員の思いを活かしつつキャリア自律を促すには、タレントマネジメントが重要。つまり、社員一人ひとりがもっている性格、能力、価値観、志向などを把握したうえで、最適なキャリアや役割をレコメンドする(もしくは要望する、期待する)ことが必要です。
もし勤務先が「放置型」のゆるブラック企業である場合は、自分は何をするべきなのか、どんな働きを期待されているのか、自ら聞きに行きフィードバックを受けることも必要かもしれません。
職場がゆるブラックだと感じた場合の有効な対処法とは?
「職場がゆるくて成長できない」と悩んでいるだけでは何も変わりません。かといって、「職場がゆるい」という漠然とした理由で転職を決めるのもあまりおすすめできません。
現状を変えたいのであれば、以下のような対処法が考えられます。
自ら学び、独自に成長する
残業が減り自由時間が増えたということは、それだけ独学する時間が増えたということ。「職場がゆるい」と不満を言う前に、自分でどんどん勉強すべきです。
業務に関することを独学するだけでなく、人に会うでもいいし、今の仕事には関係ないけれど興味をもっていたテーマを深掘りするでもいいでしょう。ボランティアや習い事、旅行だって勉強になります。
これらの経験から、「自主的に取り組みたいこと」が見つかり、今後のキャリアを真剣に考えるきっかけが得られるかもしれません。
すぐには見つからなくても、将来的に目指したいキャリアが見つかったときにプラスに働くでしょう。
たとえ職場がゆるくても、社内のさまざまなリソースを使って学び倒すことは可能です。会社の研修制度などやeラーニングを利用したり、勉強会を開催したりすることもできるでしょう。自ら工夫して学び、成長しようという姿勢に切り替えることが大切です。
「ジョブ・クラフティング」を実行する
ジョブ・クラフティングは、仕事の意義を自分自身で捉え直し、やりがいのあるものに変えるという概念のこと。「意味づけ力」ともいわれ、できるビジネスパーソンがもち合わせているスキルでもあります。
「職場がゆるい」と感じている人の多くは、与えられた仕事をただこなしているのだと思われます。受け身の姿勢でこなしているだけでは、やりがいが感じられないのも当たり前。目の前の業務に意味を見出し、やりがいにつなげる努力をしましょう。
仕事ができる人は、どんなに地味な仕事にも自分なりの意味を見つけ、どうせやるなら楽しんでやろう、学んでやろうという姿勢で臨んでいます。
このように意味づけの工夫を繰り返すことで、仕事を楽しむ力が鍛えられ、どんな仕事においてもモチベーション高く走り続けることができるようになります。その中から、新たなキャリアの目標が見えてくる可能性もあるでしょう。
会社に頼るのではなく、自ら可能性を広げる工夫を
キャリア自律できている人からすれば、ゆるブラックといわれるような企業は超ウェルカム!です。目指すキャリアに向けて勉強したり、経験値を上げるために副業を始めたりと、自由になった時間を有効活用しています。
まだやりたいことがわからず、自身の方向性が定まっていない人には、ゆるブラックは居心地の悪い環境かもしれません。しかし、だからこそ目の前の仕事に邁進してみたり、自ら貪欲に学んでみたりと、「今できること」を考えそれに注力することで、視野が広がる可能性は大いにあります。
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